正文 第47节

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    病院できちんと全部なおしゃおうと思うのっていうからcそうねcそれがいいかもしれないわねと私も言ったの。それで私たち外を二人で散歩していろんなお話をしたの。これからどうするだのcそんないろんな話ね。彼女こんなこと言ったわ。二人でここを出られて緒に暮らすことができたらいいでしょうねって」

    「レイコさんと二人でですか」

    「そうよ」とレイコさんは言って肩を小さくすぼめた。「それで私言ったのよ。私はべつにかまわないけどcワタナベ君のこといいのって。すると彼女こう言ったのcあの人のことは私きちんとするからって。それだけ。そして私と二人でどこに住もうだのcどんなことしようだのといったようなこと話したの。それから鳥小屋に行って鳥と遊んで」

    僕は冷蔵庫からビールを出して飲んだ。レイコさんはまた煙草に火をつけc猫は彼女の膝の上でぐっすりと眠りこんでいた。

    「あの子もう始めから全部しっかりと決めていたのよ。だからきっとあんなに元気でにこにこして健康そうだったのね。きっと決めちゃってc気が楽になってたのよね。それから部屋の中のいろんなものを整理してcいらないものを庭のドラム缶に入れて焼いたの。日記がわりしていたノートだとか手紙だとかcそういうのみんな。あなたの手紙もよ。それで私変だなと思ってどうして焼いちゃうのよって訊いたの。だってあの子cあなたの手紙はそれまでずっとcとても大事に保管してよく読みかえしてたんだもの。そしたらこれまでのものは全部処分してcこれから新しく生まれ変わるのって言うからc私はふうんcそういうものかなってわりに単純に納得しちゃったの。まあ筋はとおってるじゃないcそれなりに。そしてこの子も元気になって幸せになれるといいのになcと思ったの。だってその日直子は本当に可愛いかったのよ。あなたに見せたいくらい。

    それから私たちいつものように食堂で夕ごはん食べてcお風呂入ってcそれからとっておきの上等のワインあけて二人で飲んでc私がギターを弾いたの。例によってビートルス。ノルウェイの森とかミシェルとかcあの子の好きなやつ。そして私たちけっこう気持良くなっってc電気消してc適当に服脱いでcベットに寝転んでたの。すごく暑い夜でねc窓を開けてても風なんて殆んど入ってきやしないの。外はもう墨で塗りつぶされたみたいに真っ暗でねc虫の音がやたら大きく聞こえてたわ。部屋の中までムっとする夏草の匂いでいっばで。それから急にあなたの話を直子が始めたの。あなたとのセックスの話よ。それもものすごくくわしく話すの。どんな風に服を脱がされてcどんな風に体を触られてc自分がどんな風に濡れてcどんな風に入れられてcそれがどれくらい素敵だったかっていうようなことを実に克明に私にしゃべるわけ。それで私cねえcどうして今になってそんな話するのよc急にって訊いたの。だってそれまであの子cセックスのことってそんなにあからさまに話さなかったんですもの。もちろん私たちある種の療法みたいなことでセックスのこと正直に話すわよ。でもあの子はくわしいことは絶対に言わなかったのc恥ずかしがって。それを急にべらべらしゃべり出すんだもの私だって驚くわよcそりゃ。ただなんとなく話したくなったのって直子は言ったわ。べつにレイコさんが聞きたくないならもう話さないけど

    いいわよc話したいことあるんなら洗いざらい話しちゃいなさいよ。聞いてあげるからって私は言ったの。

    彼のが入ってきたときc私痛くて痛くてもうどうしていいかよくわかんないくらいだったのって直子が言ったわ。私始めてだったし。濡れてたからするっと入ったことは入ったんだけどcとにかく痛いのよ。頭がぼおっとしちゃうくらい。彼はずっと奥の方まで入れてもうこれくらいかなと思ったところで私の脚を少し上げさせてcもっと奥まで入れちゃったの。するとねc体中がひやっと冷たくなったの。まるで氷水につけられみたいに。手と脚がじんとしびれて寒気がするの。いったいどうなるんだろうc私このまま死んじゃうのかしらcそれならそれでまあかまわないやって思ったわ。でも彼は私が痛がっていることを知ってc奥の方に入れたままもうそれ以上動かさないでc私の体をやさしく抱いて髪とか首とか胸とかにずっとキスしてくれたのc長いあいだ。するとねcだんだん体にあたたかみが戻ってきたの。そして彼がゆっくりと動かし始めてねえcレイコさんcそれが本当に素晴らしいのよ。頭の中がとろけちゃいそうなくらい。このままcこの人に抱かれたまま生これやってたいと思ったくらいよ。本当にそう思ったのよ

    そんなに良かったんならワタナベ君と一緒になって毎日やってればよかったんじないのって私言ったの。

    でも駄目なのよcレイコさんって直子は言ったわ。私にはそれがわかるの。それはやって来てcもう去っていってしまったものなの。それは二度と戻ってこないのよ。何かの加減で一生に一度だけ起こったことなの。そのあとも前もc私何も感じないのよ。やりたいと思ったこともないしc濡れたこともないのよ

    もちろん私はちゃんと説明したわよcそういうのは若い女性には起こりがちなことでc年を取れば自然になおっていくのが殆んどなんだって。それに一度うまく行ったんだもの心配することないわよ。私だって結婚した当初はいろいろとうまくいかないで大変だったのよって。

    そうじゃないのと直子は言ったわ。私何も心配してないのよcレイコさん。私はただもう誰にも私の中に入ってほしくないだけなの。もう誰にも乱されたくないだけなの」

    僕はビールを飲んでしまいcレイコさんは二本目の煙草を吸ってしまった。猫がレイコさんの膝の上でのびをしc姿勢をかえてからまた眠ってしまった。レイコさんは少し迷っていたが三本目をくわえて火をつけた。

    「それから直子はしくしく泣き出したの」とレイコさんは言った。「私は彼女のベットに腰かけて頭撫でてc大丈夫よc何もかもうまく行くからって言ったの。あなたみたいに若くてきれいな女の子は男の人に抱かれて幸せになんなきゃいけないわよって。暑い夜で直子は汗やら涙やらでぐしょぐしょに濡れてたんでc私はバスタオル持ってきてcあの子の顔やら体やらを拭いてあげたの。パンツまでぐっしょりだたからcあなたちょっと脱いじゃなさいよって脱がせてねえc変なんじゃないのよ。だって私たちずっと一緒にお風呂だって入ってるしcあの子は妹みたいなものだし」

    「わかってますよcそれは」と僕は言った。

    「抱いてほしいって直子は言ったの。こんな暑いのに抱けやしないわよって言ったんけどcこれでもう最後だからって言うんだで抱いたの。体をバスタオルでくるんでc汗がくっつかないようにしてcしばらく。そして落ちついてきたらまた汗を拭いてc寝巻を着せてc寝かしつけたの。すぐにぐっすり寝ちゃったわ。あるいは寝たふりしたのかもしれないけど。でもまあどっちにしてもcすごく可愛い顔してたわよ。なんだか生まれてこのかた一度も傷ついたことのない十三か十四の女の子みたいな顔してね。それを見てから私も眠ったのc安心して。

    六時に目覚ましたとき彼女はもういなかったの。寝巻を脱ぎ捨ててあってc服と運動靴とcそれからいつも枕もとに置いてある懐中電灯がなくなってたの。まずいなって私そのとき思ったわよ。だってそうでしょc懐中電灯持って出てったってことは暗いうちにここを出ていったっていうことですものね。そして念のために机の上なんかを見てみたらcそのメモ用紙があったのよ。洋服は全部レイコさんにあげて下さいって。それで私すぐみんなのところに行って手わけして直子を探してって言ったの。そして全員で寮の中からまわりの林までしらみつぶしに探したの。探しあてるのに五時間かかったわよ。あの子c自分でちゃんとロープまで用意してもってきていたのよ」

    レイコさんはため息をついてc猫の頭を撫でた。

    「お茶飲みますか」と僕は訊いてみた。

    「ありがとう」と彼女は言った。

    僕はお湯を沸かしてお茶を入れc縁側に戻った。もう夕暮に近くc日の光ずいぶん弱くなりc木々の影が長く我々の足もとにまでのびていた。僕はお茶を飲みながらc山吹やらつつじやら南天やらを思いつきで出鱈目に散らばしたような奇妙に雑然とした庭を眺めていた。

    「それからしばらくして救急車が来て直子をつれていってc私は警官にいろいろと事情を訊かれたの。訊くだってたいしたこと訊かないわよ。一応遺書らしき書き置きはあるしc自殺だってことははっきりしてるしcそれあの人たちc精神病の患者なんだから自殺くらいするだろうって思ってるのよ。だからひととおり形式的に訊くだけなの。警察が帰ってしまうと私すぐ電報打ったのcあなたに」

    「淋しい葬式でしたね」と僕は言った。「すごくひっそりしてc人も少なくて。家の人は僕が直子の死んだことどうして知ったのかってcそればかり気にしていて。きっとまわりの人に自殺だってわかるのが嫌だったんですね。本当はお葬式なんて行くべきじやなかったんですよ。僕はそれですごくひどい気分になっちゃってcすぐ旅行に出ちゃったんです」

    「ねえワタナベ君c散歩しない」とレイコさんが言った。「晩ごはんの買物でも行きましょうよ。私おなか減ったきちゃったわ」

    「いいですよc何か食べたいものありますか」

    「すき焼き」と彼女は言った。「だって私c鍋ものなんて何年も何年も食べてないんだもの。すき焼きなんて夢にまで見ちゃったわよ。肉とネギと糸こんにゃくと焼豆腐と春菊が入ってcぐつぐつと――」

    「それはいいんですけどねcすき焼鍋ってものがないんですよcうちには」

    「大丈夫よc私にまかせなさい。大家さんのところで借りてくるから」

    彼女はさっさと母屋の方に行ってc立派なすき焼鍋とガスこんろと長いゴムホースを借りてきた。

    「どうたいしたもんでしょう」

    「まったく」と僕は感心して言った。

    我々は近所の小さな商店街で牛肉や玉子や野菜や豆腐を買い揃えc酒屋で比較的まともそうな白ワインを買った。僕は自分で払うと主張したがc彼女が結局全部払った。

    「甥に食料品の勘定払わせたなんてわかったらc私は親戚中の笑いものだわよ」とレイコさんは言った。「それに私けっこうちゃんとお金持ってるのよ。だがら心配しないでいいの。いくらなんでも無一文で出てきたりはしないわよ」

    家に帰るとレイコさんは米を洗って炊きc僕はゴムホースをひっぱって縁側ですき焼を食べる準備をした。準備が終わるとレイコさんハギターケースから自分のギターをとりだしcもう薄暗くなった縁側に座ってc楽器の具合をたしかめるようにゆっくりとバッハのフーガを弾いた。細かいところをわざとゆっくりと弾いたりc速く弾いたりcぶっきら棒に弾いたりcセンチメンタルに弾いたりしてcそんないろんな音にいかにも愛しそうに耳を澄ませていた。ギターを弾いているときのレイコさんはcまるで気に入ったドレスを眺めている十七か十八の女の子みたいに見えた。目がきらきらとしてc口もとがきゅっとひきしまったりc微かなほほえみの影をふと浮かべたりした。曲を弾き終えるとc彼女は柱にもたれて空を眺めc何か考えごとをしていた。

    「話しかけていいですか」と僕は訊いた。

    「いいわよ。おなかすいたなあって思ってただけだから」とレイコさんは言った。

    「レイコさんは御主人や娘さんに会いに行かないんですか東京にいるでしょう」

    「横浜。でも行かないわよc前にも言ったでしょあの人たちcもう私とは関りあわない方がいいのよ。あの人たちにはあの人たちの新しい生活があるしc私は会えば会っったで辛くなるし。会わないのがいちばんよ」

    彼女は空になったセブンスターの箱を丸めて捨てc鞄の中から新しい箱をとりだしc封を切って一本くわえた。しかし火はつけなかった。

    「私はもう終わってしまった人間なのよ。あなたの目の前にいるのはかつての私自身の残存記憶にすぎないのよ。私自身の中にあったいちばん大事なものはもうとっくの昔に死んでしまっていてc私はただその記憶に従って行動しているにすぎないのよ」

    「でも僕は今のレイコさんがとても好きですよ。残存記憶であろうが何であろうがね。そしてこんなことどうでもいいことかもしれないけれどcレイコさんが直子の服を着てくれていることは僕としてはとても嬉しいですね」

    レイコさんはにっこり笑ってcライターで煙草に火をつけた。「あなた年のわりに女の人の喜ばせ方よく知っているのね」

    僕は少し赤くなった。「僕はただ思っていること正直に言ってるだけですよ」

    「わかってるわよ」とレイコさんは笑って言った。

    そのうちにごはんが炊きあがったのでc僕は鍋に油をしいてすき焼の用意を始めた。

    「これc夢じゃないわよね」とレイコさんはくんくんと匂いをかぎながら言った。

    「百パーセントの現実のすき焼ですね。経験的に言って」と僕は言った。

    我々はどちらかというとろくに話もせずcただ黙々とすき焼をつつきcビールを飲みcそしてごはんを食べた。かもめが匂いをかぎつけてやってきたので肉をわけてやった。腹いっぱいになるととc僕らは二人で縁側の柱にもたれc月を眺めた。

    「満足しましたかcこれで」と僕は訊いた。

    「とても。申しぶんなく」とレイコさんは苦しそうに答えた。「私こんなに食べたのはじめてよ」

    「これからどうします」

    「一服したあとで風呂屋さんに行きたいわね。髪がぐしゃぐしゃで洗いたいのよ」

    「いいですよcすぐ近くにありますから」と僕は言った。

    「ところでワタナベ君cもしよかったら教えてほしいんだけどcその緑さんっていう女の子ともう寝たの」とレイコさんが訊いた。

    「セックスしたかっていうことですかしてませんよ。いろんなことがきちんとするまではやらないって決めたんです」

    「もうこれできちんとしたんじゃないかしら」

    僕はよくわからないというように首を振った。「直子が死んじゃったから物事は落ちつくべきところに落ちついちゃったってこと」

    「そうじゃないわよ。だってあなた直子が死ぬ前からもうちゃんと決めてたじゃないcその緑さんという人とは離れるわけにはいかないんだって。直子は死ぬことを選んだのよ。あなたもう大人なんだからc自分の選んだものにはきちんと責任を持たなくちゃ。そうしないと何もかも駄目になっちゃわよ」

    「でも忘れられないですよ」と僕は言った。「僕は直子にずっと君を待っているって言ったんですよ。でも僕は待てなかった。結局最後の最後で彼女を放り出しちゃった。これは誰のせいだとか誰のせいじゃないとかいう問題じゃないんです。僕自身の問題なんです。たぶん僕が途中で放り出さなくても結果は同じだったと思います。直子はやはり死を選んだだろうと思います。でもそれとは関係なくc僕は自分自身に許しがたいものを感じるんです。レイコさんはそれが自然な心の動きであれば仕方ないって言うけれどc僕と直子の関係はそれほど単純なものではなかったんです。考えてみれば我々は最初から生死の境い目で結びつきあってたんです」

    「あなたがもし直子の死に対して何か痛みのようなものを感じるのならcあなたはその痛みを残りの人生をとおしてずっと感じつづけなさい。そしてもし学べるものならcそこから何かを学びなさい。でもそれとは別に緑さんと二人で幸せになりなさい。あなたの痛みは緑さんとは関

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